和食の原点“おにぎり”
おにぎりを一言でいうと「和食の原点」。日本文化そのものです。大人から子どもまで、北海道から沖縄まで、日本人であればおにぎりを知らない人はいませんし、お金があってもなくても誰もが分け隔てなく食べたことがある。そんな食べ物って、そうそうないですし、そんな国もあまりないでしょう。おにぎりは日本人がごはんを食べるようになってすぐにできた料理だと思います。硬くなったら焼いて食べ、たけのこの皮に包んでおけば、丸一日経ってもおいしい。料理の中でいちばん親しみがあって、皆がつくれて、皆がおいしく食べられる……そういう意味で和食の原点です。
朝食としても、おやつとしても
子どものころ、朝食はおにぎり。時間がないのでおにぎりを食べながら、今日の予定表を見たり、ランドセルに教科書を放り込んだり。「中に塩昆布は入れないで。たらこにして」など、結構ややこしいことを言っていました。京都という土地柄、水菜の漬物を刻んでしょうゆをまぶし、おにぎりに混ぜるというのも多かったです。母がよくおにぎりを握って戸棚に入れておいてくれ、学校から帰ってきたときのおやつとして食べていました。
シンプルだからこそ難しい
今は鮭のハラスやイクラを具にするなど、いろんなおにぎりが出回っていますが、最高のおにぎりといえば「塩にぎり」。これが究極だと思います。塩だけで握ると米の甘さが分かります。中の具ではなく、お米のおいしさを食べるのが本来のおにぎりです。料理というのはシンプルにするほど難しくなるように、塩にぎりほど難しいものはない。米と水と塩だけの料理ですが、米の質、水の質、ごはんの炊き方、この3つによっておいしさが変わりますし、どんな塩を使っているのかによっても味が変わります。また、握り加減が肝で、硬すぎてもだめだし、ぼろぼろつぶれるようなおにぎりもよくない。ちゃんと握られていることが大切です。